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「うるせーな。通りがかったんだよ、偶然」
「え、でも長瀬の家ならこっちの方向に用なんて……」
「この酒屋」
長瀬は顎で私がいま出て来たばかりの酒屋を指した。
「お前んち行くときに見つけて、何回か来てんだよ。意外に珍しい酒が揃ってるからな」
「そー、なんだ……」
そんなこと、全然知らなかった。
私もよく通っているから、会っても良さそうなもんなんだけど。
「確かに、ここって品揃えがなかなか良いんだよね」
「ああ。地酒が並んでるコーナー行って驚いた」
「ワインもけっこう揃ってるよ。あと、焼酎も」
「すげーな。経営者も酒飲みなんだろーな」
「そーだね、間違いなく」
見たことのない経営者の姿を想像して、くすくす笑う。
そこで私は、はた、と気がついた。
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