未来に関するワークショップへの招待状

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 墓の前で「ご先祖様」と呼びかける時、命をつないできてくれた先祖の中に細菌のような存在がいたことを考えもしない人が大半ではなかろうか。人は一億年前のネズミのような存在を祖先だとは思わない。3千年以上前は歴史がないからだろうが、ご先祖様のイメージは、3千年以上は遡らない。だが、3千年前の日本人の使う日本語は、我々には理解できない。日本語があったかどうかさえ定かではない。百年前のご先祖様も、我々の言葉を理解できないだろう。漢字を使って筆談しようとしても、漢字の形が違うから意志が伝わらない。意志を通わせることもできない祖先のおかげで生まれてきたのが我々だ。その事実に感謝しなければいけない。ネズミのような先祖にも感謝しないといけない。  1億年前のことは、かなり調べられているが、1億年後のことは何もわからない。だが、そうはいってもワークショップを開こうというのだから、想像するよりない。  現代人の代表はイマノさんという普通のサラリーマンだ。私の分身だと思ってもらっていい。ただし、私の分身だからこそかもしれないが、心は折れ曲がっている。心の深い部分には大きな傷があって、今も血を流している。何をしでかすかわからない不良サラリーマンだ。  5つのキャラクターを集め、ワークショップで自由に語らせる。どんな化学変化が起きるのか見てみたい。私にそれだけの筆力があるかどうか自信はないが、書き始める。泳ぎができないのに、大きな川の横断を目指すチャレンジャーのようなものだ。私には対岸が見えない。海かもしれない。彼らに語らせるといっても、大ゲンカをしたらそこでおしまいになる。化学反応が暴走して大爆発したら私は死ぬかもしれない。それでもいこうと思う。
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