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部下に仕事を引き継ぎ、私服に着替え、社長室の扉をノックした。どうぞといわれたので、明るい声で、
イマノ「イマノただ今参上」といって、ドアを開けた。社長は、
社長「忙しいところ悪いなぁ。ちょっとだけ待ってて」といって、ソファーを示した。女子事務員がすぐにアイスコーヒーを持ってきた。改まった雰囲気だ。社員ではなく、客が来た時の対応だ。臨戦態勢で臨まないといけない。社長は電話を終え、パソコンを閉じてからやってきて、
社長「現在、当社が直面している状況はわかっているよね。イマノさん」といった。
イマノは先代の社長の頃から勤めているので、後から入社した社長は、彼をさん付けで呼ぶ。
イマノ「現場はいつも忙しいですが、不況なんでしょうね」
社長「もう好調にはなることはない。私は、ここで会社の方針を変える決断をした」
イマノ「リストラですか」と、大声で聞いた。
社長「いや。本気で環境に取り組む」
イマノ「今だって、環境マネジメントシステムといって、環境活動に取り組んでいるじゃないですか」
社長「本気だという気持ちを示すために、イマノさんに環境事務局をやってもらう」
その指示は、イマノにとって晴天の霹靂だった。会社が環境活動に取り組んでいるのは知っている。ただし、あまり効果は出ていない。毎年、審査員がやってくるが、「環境活動の仕組みはあるが、あまり機能していない」といって帰っていく。
環境事務局がいろいろな提案をするが、イマノたち現場のオペレーターが全く協力しないから、何も進んでいない。
環境事務局が「環境週間だから、省エネに協力してください。環境第一」ですといってきた時、イマノは機械を止めて今日は定時で帰ろうといって皆で一斉に帰宅した。コンプレッサーを止めたので、機械は動かなくなり帰るしかなかった。生産計画が狂うから機械を止めないように課長がいうのに環境第一なんですから一緒に帰りましょうといって、課長まで引き連れて帰った。
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