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イマノ「しかし、環境は第五なんでしょう」
社長「それはその通り。ただ、五番目でも大事だということに変わりはない。やらなくていいということではない。私は、環境のテーマとして、省エネを進めるつもりだ。工場の電力を削減しないと経費削減はできない。日本で製造業を続けるには、使用エネルギーを半分ぐらいにしないといけない。そのためには、自分で発電することも考えないといけないかもしれない」
イマノ「でも、1時間でできる加工を2時間かけてゆっくり加工するという提案がマトモな提案だと思いますか。センスがあまりにもない。冗談を言われたのかと思いました。省エネをしたいのなら、スピードを上げないといけない。高速加工こそ環境に優しい。ただ、工具の摩耗と切削面の表面粗さを考えると、今の速度以上には上げられない。
私は入社以来、加工時間短縮の試行錯誤を繰り返してきた。新しい工具が出るたびに試してきた。時間短縮は納期面と経費面で大きな効果がある。無論、環境にもいい。遅い加工に何もいいことはない。そう思いませんか」と質問した。質問しているが、自信満々の表情で、違うと思うのなら議論しましょうといいたげだった。
社長「こうやってイマノさんと話しても私には説得できないから、環境教育に一週間行ってもらう。来週一週間、夢野研究所に行って、新しい自分に出会ってきてほしい」
イマノ「業務命令ですか」
社長「当然です。三鷹に一週間出張です」といって、パンフレットを渡された。表紙には夢野研究所の建屋が写っていた。楕円形に作られた研究所の建物はUFOのようにも見えた。周囲は鬱蒼としたトトロの出てきそうな森だった。
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