未来に関するワークショップへの招待状

9/15
前へ
/245ページ
次へ
2.夢野研究所 受付  月曜日の朝八時半、JR三鷹駅に到着した。  三鷹駅から、夢野研究所までバスでいく。朝9時までに到着するように指示されていたが、何とか間に合いそうだ。1週間の宿泊付きの研修なので、着替えを詰め込んだ大きなカバンを抱えていたので通勤ラッシュのサラリーマンから顰蹙をかったが、何とか三鷹まで到着できた。  家族と離れることは寂しいが、会社が教育費用を出してくれることは嬉しかった。イマノにとって泊まりの教育は初めてだった。課長たちはどう見ても観光旅行としか思えない海外旅行に行くことがある。業界の親睦を兼ねた視察旅行だというのだが、羨ましくて仕方なかった。  三鷹でどんな一週間が待っているか見当もつかなかったが、楽しみにしている。遠足に行く感じだ。  バスに乗り込むと、車窓から緑の多い景色が見えた。木々が葉を広げている。イマノは、緑を前にし、突然自分は工作機械が嫌いかもしれないと思った。緑は心を癒してくれる。それに比べて機械はいつも心を苛立たせる。そんな風に思ったのは初めてだった。  講義中は居眠りしていればいい。昼休みには、木々の中で昼食がとれるかもしれない。少なくとも機械加工の現場のようにずっと立ったまま終日過ごすことはなさそうだ。  ただ、勉強するには年寄りになってしまったと思う。座学で人の話を聞いているとすぐに居眠りしてしまう。講義でよく質問するのは、質問でも考えていないと熟睡してしまうからだ。  終点近くの「夢野研究所前」というバス停で下りたのはイマノ一人だった。看板に従って森の中を歩いていく。カバンのキャスターの音だけが響きわたった。森の中を歩いていくと、夢の中に迷い込んでいく気がした。周囲に人はおらず、ここが東京だということさえ忘れてしまう。
/245ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加