いつもの世界

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「よし、俺は中に入るぞ」 中に進む。 壁には、軍人が着るようなガスマスクやヘルメット、アーマー、背嚢、軍靴に銃まであった。 しかも、きっちり5セットである。 「なんだ...こりゃあ」 俺は所謂ミリオタだが、マニアじゃなくてもわかる。 軍隊の武装一式だ。 「どうするよ?」 友也が言った。 「とりあえず着ちまおう」 「まぁ...そうだよなぁ」 馴れない手つきで、ヘルメットをかぶり、アーマーをつけてみた。 俺達は全員昨日の服装のまま、つまり学生服だ。 Yシャツの上からアーマーとヘルメット...という組み合わせは、なんだか可笑しかった。 気になったのは、これらが間違いなく俺達のために置かれたものだ、ということだった。 なぜなら、サイズがぴったりだったからだ。 男の俺達がぴったりなのはまだわかる、しかし、美希や綾まで靴のサイズがぴったりなのは、明らかにおかしかった。 背嚢の中には、たくさんの食料、弾薬や医療キットまで入っていた。 銃には、ライトと銃剣が装着されていた。 どうも、自衛隊の89式のようだ。 89式なら前にネットに落ちていたVRで疑似射撃やメンテをやったことがある。 「なぁ、ここ、どこだと思う?」 大地が答えた。 「わからんが...電脳世界かもしれんぞ?」 友也が言う。 「だれかが勝手に俺らの電脳になんか流してるってことか?」 「さぁな。しかし..そうだとして、どうやってここから出る」 「なにより怖いのは、電脳世界じゃなかった場合、だろ? 」 美希が話に入ってきた。 「でもここはきっと電脳世界だよ。だってなんだか画質荒くない?」 綾が言う。 「荒い...というより、鮮明じゃないよね。」 俺は頷いた。 「たしかに。なんか、違うよな」 大地が言った。 「まぁ、ともかく、だ。なんにせよ、進もうぜ。ここにいても仕方ない。」 「それと、拓也。どうせ、この銃のVRやったことあるんだろ?後で使い方教えてな。」 俺は頷いた。 どうも、ここは電脳空間らしい、ということがわかり、一同はとりあえず安心した。 電脳空間なら、死んでも実際に死ぬことはないし、意識不明になっても簡単にサルベージ可能だからだ。
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