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俺と彼奴の出会いは偶然だった。
昔から俺には見たくないものが見えた。
学校では首を吊った女の霊を見たし、
誰かに憑いてる奴も見てきた。
見えるなんて、誰にも言わなかった。
言っても誰も信じて貰えないのがオチだ。
だけど、たった一人だけは俺を信じてくれた。
あの人はもう他界し、この世には居ないが…。
俺は今年の春に無事に合格し、大学生だ。
実家から大学生まで距離があるからと、
大学に近いアパートで独り暮らしを始めていた。
( 嗚呼、今日も居る。)
何時も通りにバイトから帰宅すると
アパートの前に佇んでる少女。
通行人が気にせず通行してるってことは
此処の地縛霊だろう。
俺も気付いてないように通り過ぎようとすると、
「 ……ねぇ、私が見えるの? 」
「 えっ。」
いつの間にか、少女が目の前に立っていた。
突然のことに驚き声を上げてしまった。
「 やっと、見える人に会えた。」
と嬉しそうな笑みを浮かべる少女に
俺は慌ててその場を立ち去ろうとする。
が、俺の前に少女が立ち塞がる。
「 ま、待って。話を聞いてよ!! 」
「 俺は何も見えてない。何も聞かない。」
「 え、見えてるでしょ!!絶対!! 」
「 見えないったら、見えないんだよ!! 」
俺がそう強く言い放つと途端に集まる
周りからの視線。
周りには少女は見えないのだから、
俺は独り言を言ってるようにしか見えないのだ。
俺は少女を置いて自分の部屋へと走って戻った。
( 何で、俺がこんな目に。)
ズルズルとベットに座り込んでは
深い溜め息を吐き出す。
「 ねぇ、どうしたの…? 」
「 どうしたもこうしたも、あの少女の霊のせいで…。」
「 やっぱり、私のことが見えるんだね。」
にっこりと音がついてきそうな笑みを
浮かべる少女に俺は後退り、見間違いかと
もう一度確認するが、見間違いでないようだ。
「 な、何で居るんだよ!! 」
「 やっと見える人見つけたのにどっかに行っちゃうんだもん。」
ぷくりと子供みたいに頬を膨らませる少女。
「……、お前なんであんな所に居たんだよ? 」
仕方なくそう問い掛けてやると、
「 お前じゃないよ。私は宮野汐里(ミヤノ シオリ)だよ。貴方の名前は? 」
「 俺の名前は、藤原比呂( フジワラヒロ )。」
俺がそう返してやると、少女…否、汐里は嬉しそうな笑みを浮かべた。
これが俺と汐里の不思議な出会い。
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