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「マリアが逃げ込んだのは運悪く学校の屋上だった。屋上ってさ、一番開けてるのにもうそこまで行くと逃げ場なんかないんだよ」
自分を憎む複数の人間に追いかけられて――。
彼女は空に一番近い場所まで逃げたんだ。
「彼女は恐怖のあまり、屋上の柵を乗り越えた。さすがにみんな驚いて『戻れ』と手を差し伸べた。だけど先生ならどう?今さっきまで血眼で自分を追いかけてきた人間の腕になんて掴まれます?」
僕は無言で頭を振った。
「次に起こったのは――今先生が想像している通りの事ですよ」
僕はいつの間にか親指の爪を噛んでいた。
子供の頃から不安になった時にする癖だ。
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