第1話

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屋上の扉を開くと、いつもと同じ冷たい風が吹き抜ける。 「さむっ!!」 齋藤が俺の腕を抱き締める。 女子かよ。 「おい、歩きにくい。くっつくな」 「だって寒いんだもん」 齋藤は腕に抱きつき、くっつきながらずるずると歩く。 お、重い…。 歩きにくい…。 なんとかいつもの段差にたどり着くと、今度は抱き締めてくる。 「おい。離れろ」 「いやだ、寒いもん」 そういってより抱き締めてくる齋藤。 こうなったら、仕方無い。 「わかった。ギター弾かない」 「ダメッ!!」 勢いよく離れる齋藤。 「じゃあ大人しく座ってろ」 「わかった…」 これでギターが弾けるんだけど…。 いざとなると恥ずかしいな…。 「もじもじしてないで、早く弾いてよ」 俺は深く深呼吸してから、ギターを構えた。
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