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わたしはその提案をすぐに打ち消した。
「だめですよ、わたしなんか」
「そんなことないと思う。椎名さんはね、人の気持ちがすごくわかる子なのよ。
自分で気付いてないだけ。
それって、すごい才能なんだから。
うちの放送部はね、そういう子を探してるの。
あなたはなかなか見つからない逸材だと思う。
それに……。
放送部は他にも、そういう素敵な子たちが集まってくる場所でもあるの。
あなたの居場所にぴったりなんじゃないかしら」
フジコ先生の話を聞くうちに、少しだけ「やってみたい」という気持ちが芽生えた。
放送部に入ってから、わたしの毎日は、日に日に輝きを増して行った。
木曜日の放課後は、カウンセリング室ではなく放送部の部室に通うようになった。
そして少しずつ、春山先生を好きになった。
友達と毎日を楽しく過ごし、初めての恋をし、わたしは幸せな学園生活を手に入れた。
いつの間にかカウンセリング室で過ごした時間は、わたしの中で過去のものになりつつあった。
――だから――。
春山先生の下の名前が”哲哉”だと知った時も、気にも留めなかったのだ。
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