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「やっ、せんぱい……っ」  右手でブラウスのボタンを外しながら、首筋に唇を押しあてる。  首に針で刺されたような痛みが走り、わたしの口から小さく声が漏れた。  ボタンがうまく外れないのか、苛立った先輩がぐいっと襟元を引っ張った。  プチン、とボタンが勢いよく飛ぶ。  そして――。  突然、手の動きがぴたりと止まった。 「……?」    顔を見ると、先輩はドアの方をじっと見つめていた。  目線を追うと、……いつの間にか開いていた扉の向こうに、春山先生が立っていた。 「……ごめん、邪魔した?」  春山先生はいつもと何も変わらない様子で部屋の中に入って来た。  テーブルの上にパサッと投稿用紙を置き、こちらに顔を向ける。 「だめだよ、板東。 不純異性交遊は一応、教師のいないところで行ってもらわないと。 我慢できない気持ちも、よくわかるけどさ」  先生は窓の外を親指で示した。 「雨、あがってるよ。……キャプテンがいないと、まずいんじゃない?」 「……」  先輩はぐっと唇を噛み締め、わたしに視線を戻した。  はだけた胸元に気づき、そっとブラウスの前を重ね合わせて、――ごめん、と小さく呟き、部室を出て行った。
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