-2-

8/11
1082人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
 わたしはその提案をすぐに打ち消した。 「だめですよ、わたしなんか」 「そんなことないと思う。椎名さんはね、人の気持ちがすごくわかる子なのよ。 自分で気付いてないだけ。 それって、すごい才能なんだから。 うちの放送部はね、そういう子を探してるの。 あなたはなかなか見つからない逸材だと思う。 それに……。 放送部は他にも、そういう素敵な子たちが集まってくる場所でもあるの。 あなたの居場所にぴったりなんじゃないかしら」  フジコ先生の話を聞くうちに、少しだけ「やってみたい」という気持ちが芽生えた。  放送部に入ってから、わたしの毎日は、日に日に輝きを増して行った。  木曜日の放課後は、カウンセリング室ではなく放送部の部室に通うようになった。  そして少しずつ、春山先生を好きになった。  友達と毎日を楽しく過ごし、初めての恋をし、わたしは幸せな学園生活を手に入れた。  いつの間にかカウンセリング室で過ごした時間は、わたしの中で過去のものになりつつあった。  ――だから――。  春山先生の下の名前が”哲哉”だと知った時も、気にも留めなかったのだ。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!