1090人が本棚に入れています
本棚に追加
「やっ、せんぱい……っ」
右手でブラウスのボタンを外しながら、首筋に唇を押しあてる。
首に針で刺されたような痛みが走り、わたしの口から小さく声が漏れた。
ボタンがうまく外れないのか、苛立った先輩がぐいっと襟元を引っ張った。
プチン、とボタンが勢いよく飛ぶ。
そして――。
突然、手の動きがぴたりと止まった。
「……?」
顔を見ると、先輩はドアの方をじっと見つめていた。
目線を追うと、……いつの間にか開いていた扉の向こうに、春山先生が立っていた。
「……ごめん、邪魔した?」
春山先生はいつもと何も変わらない様子で部屋の中に入って来た。
テーブルの上にパサッと投稿用紙を置き、こちらに顔を向ける。
「だめだよ、板東。
不純異性交遊は一応、教師のいないところで行ってもらわないと。
我慢できない気持ちも、よくわかるけどさ」
先生は窓の外を親指で示した。
「雨、あがってるよ。……キャプテンがいないと、まずいんじゃない?」
「……」
先輩はぐっと唇を噛み締め、わたしに視線を戻した。
はだけた胸元に気づき、そっとブラウスの前を重ね合わせて、――ごめん、と小さく呟き、部室を出て行った。
最初のコメントを投稿しよう!