序章--忌まわしき記憶--

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「どうして……」  陽の光を反射していた剣は血と脂に塗れ、既に斬れ味は最低まで落ちている。だがそれでも少年は、幅広い両手剣で敵を叩き潰すようにねじ切ると、もの言わぬ骸となった魔物に向かって剣を振り下ろした。何度も何度も、それの身がすり潰され、噴き出る血が無くなってもただひたすらに。剣を振り上げ、振り下ろす。汚い言葉を……思い付く限りの罵詈雑言を剣と共にぶつける。  それを邪魔するように別の魔物がやって来ると、少年はその一連の作業を止めて新しい作業に入る。新しい作業と言っても魔物を惨殺するだけで、少年ににとってそれは何ヶ月も前から続けてきた日常だった。 「どうして……」  呟く。迷い子のように声は震え、呪術師のように怨念がこもる。疑問と、怒りと、哀しみと、諦観。 「どうして……」  剣を振り上げ、振り下ろす。血が飛んで整った顔が血に塗れても、少年は気にする事もなく再び腕を動かす。そこに希望や未来は無く、ただ過去の幻影がちらついているだけ。それでもそれに縋るように少年は生きる。死をもたらした存在が少年に生をもたらす。 「――――サク、止めろ! そんな事をしても無意味だッ!」  見かねた仲間が少年を止めようと近付くが、それを意に返さず少年は行為に没頭する。今の少年に必要なのは愛情でも友情でもなく、燃え上がるような憎悪だけなのだから――――。
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