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(…………頭が痛い)
その元凶とも言えるメイドに目を向ける。名はシリル、姓はアルブレヒツベルガー。見た目はどこかのご令嬢だが、行動は完全に痴女その物。
そんな彼女ではあるが、実はかなり優秀なメイドだ。事実サクの着替えはおろか、朝食も荷物も完璧に用意してある。難有りな性格だが、それはサクの前だけで普段は正にクールビューティー。後輩だけでは無く教師や先輩にも頼られる才女。…………そう、この痴女かつクールビューティーなメイドは、サクの同級生なのだ。
正確に言うとサクは貴族科でシリルは従士科だが、学年という点では二人共四年生となる。ちなみに六年制の学校だ。
「…………シリル、腹減った」
「すぐにご準備致します」
優雅に礼をすると、シリルは用意に取りかかる。と言っても大半は既に出来ているため、数秒と待たずにサクは席につく。
ベッドとテーブルしかない質素な部屋で、場違いに輝く彩り豊かな食器。沢山の草花が絡み合うその食器の上には、サクが指示した和食がそっと身を潜めるように乗っている。白身魚のバター焼きに卵焼きと、残念ながら味噌汁は存在しないが十分に和食と呼べる代物だった。
「どうぞ、お召し上がり下さい」
質素な部屋には似合わない、銀髪のメイドと豪華な皿。それらを横目に見ながら、サクはひっそりと溜め息を吐いた。
(何で、こんな事になったんだったか…………)
その原因は、僅か三日前にあった。
△ △ △
「ビッテンフェルト」
教師に名を呼ばれ、サクは歩みを止めた。そして軽く首を傾げる。何故呼ばれたのだろうか? ではなく、どの用件で呼ばれたのだろうか? が正しい。サクは授業こそ休んだ事は無いが、テストと名の付く物は全てサボタージュして来た。主要な魔法が使えないためテストを受ける意味が無いからだが、教師からすると印象は良くないだろう。そんなわけでサクは、よく教師に絡まれる事が多かった。
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