14人が本棚に入れています
本棚に追加
あぁ今思えば
あの割り箸を
割り裂いてやれたなら
まだどんなにか気が晴れたであろう。
しかし私には
魂を引き抜かれた両脚を引きずり
其処より立ち去るしか術は無かったのだ。
初夏の趣は
城下の町並みを紺碧の彩りに染めていた。
微かに聞こえる筈の蝉の声が
覚めぬ幻夢に呑まれた私を引き戻すように耳元を掠め
やがて聞こえなくなると
パタリと落ちて
無に帰した。
最初のコメントを投稿しよう!