四乃巻

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この時世において 心中は御法度であり 死罪は免れぬ重罪である。 其れが遊女であれば尚のこと。 恋乱れたあの人の心は 焦がれた男と果てるを望みしも 願い叶わず 世を儚み 怨み 憂い嘆いて あの世へと独り 身を投げたのだ。 来世でこそ結ばれんと 私ではない 其の人から贈られた 一対を抱いて―― 其れが 私が後に人づてに聞き知った あの人の゙全でであった。
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