四乃巻

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闇夜に惑いし哀れなる蛍火が 漆黒に悲哀という名の色を重ねて浮かび 消えてゆく。 其れはあの人の黒髪に宿った情念か はたまた私の魂より零れた 砕かれた珠玉のかんざしの欠片であったのか 如何なるものであれ其の全ては 今この身より流るる血潮と共に ただ夢幻へと帰するのである。 再び一対と成り得ぬと知りつつも あの人の面影を探して――
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