3話目

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「ちょっと暇だし自転車で海まで行こうかな~。」と思った俺は自転車に乗って川の土手の所を海の方に向かって走っていた。海まではだいたい一時間程で着く。 その日は真夏日で気温が高く、雲一つない青空に太陽がギラギラと輝いていた。 しばらく走っていると急に自分の影が目についた。自転車をこいでいる自分の影だ。太陽の日差しを背に受けているので影は俺の前にできていた。影を見ていると妙な事に気がついた。その自分の影には首から上が無かった。「え?なに?どういうこと?コレ?」 と思った瞬間すごい恐怖がこみ上げてきた。 真夏日だというのに体がガタガタ震え始めた。自転車を止めようとしたが止められなかった。というか、「自転車を止めるな。」という信号が直接体に送られてきて止めることができなかった。 「止めようとするのに体がそれを拒否する。」といった感じだった。 土手には俺の他には誰一人いなかった。いつもならジョギングしている人や他にも自転車をこいでいる人がいるのだが。 土手から川の反対側に降りると道路があるのだけど車も一台も通っていなかった。蝉の鳴き声と俺が自転車をこぐ音しかしていなかった。 どれくらい時間が経ったのだろうか、前方に海が見えてきた。しかし自転車を止めることはできない。 このままでは海に突っ込んでしまう。やばいと思った俺は頭の中で必死に南無妙法蓮華経を唱えていた。 すると今まで気づかなかったのだが背後に人の気配を感じた。その瞬間、なぜか俺の体から恐怖が消えて体が動かせるようになった。 自転車を止めると海が目の前にあった。あとちょっと進んでいたら海に落ちていただろう。 驚いてその場に呆然としていると後ろから自転車のベルが。 かなり驚いて身をかわすと自転車に乗った中年の男がすごい表情でこちらを睨みつけたまま海に沈んでいった。沈んでいったというか、道が海の中に続いているかのようにスーッと海の中に入っていった。 時計を見るとまだ家を出た時刻から二十分ぐらいしか経っていなかった。どんなに急いでも家から海まで四十分はかかる。わけが分からなくなった俺はとりあえず近くに住む友人に連絡して
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