28話目

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僕の通っていた小学校はお墓の上に建てられたものでした。時々、花壇の土の中から昔の貨幣が出てきたりしました。なんでも、その貨幣は土葬で埋葬された死者の手に握らせる物に使っていたということなんですが・・・。 お墓の上に立てられたということもあって、時折、妙なものが出たりしたのですが・・・。 これは、その小学校にあった一本の木の話です。 ある日、校庭で友達とボール遊びをしていて、ボールがむこうの方に飛んでいってしまいました。 「ぼく、取ってくるよ」 そう言って、僕はボールを取りに行きました。 ボールは木の根元に転がっていました。 ボールをつかんでひょいっと顔を上げた僕は絶叫しました。 その木に、まるで老人のような顔のこぶがあったのです。 模様なんかじゃありませんでした。 「そういえば、そう見えなくもない」そんな程度のものではありませんでした。 あきらかに、老人の顔でした。 僕は友達を呼びました。それを見たみんなもひっくり返り、このことは学校中に広まりました。 その木はいつからか「おじいさんの木」と呼ばれるようになりました。 不思議なことに、初め無表情だったその老人の顔は、だんだん日をおうごとに悲痛な表情に変わっているような気がしました。 それを、知ったみんなは「きっと、あの木の下にはじいさんの死体が埋まっているんだ。きっと殺されたんだ。」などと口々に噂しました。 そんなある日の夕方、僕は学校のすぐ裏にある文房具屋に文具を買いに出かけました。 学校の裏道に来た時、ちょうどあの「おじいさんの木」の裏側を通っていることに気がついたんです。 「よく通るのに全然気がつかなかったなぁ」 そう、思いながら裏側を見せている「おじさんの木」を眺めながら通り過ぎようとしたとき、僕は恐怖と驚きでそこに座り込んでしまいました。 「おじいさんの木」の裏側、そこには無数の顔があったのです。老若男女さまざまな顔があちこちにあり、皆苦痛な表情を浮かべていました。 そして、かすかに「…いたいよ…いたいよ…」と聞こえた気がしました。 その出来事のことも、一気に学校中に広まり、みんな怖がって「おじいさんの木」に近づかなくなり、木の話もしなくなっていきました…。 今では、小学校も新しく改築され、美しい学校に生まれ変わっています。「おじいさんの木」があった場所は駐車場になっていました。
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