29話目

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そして、もっと驚いた事に、ドアノブがビッショリ濡れていたのです・・・・ 数日後・・・ 友人の家に遊びに行ってみると、友人は、精神的にかなり参っているようでした。 友人の話では、それが毎日の様に起きるのだそうです。 好奇心旺盛な私は、意を決して近所に聞き込みに行きました。 友人もアパートの隣人に聞いて見たそうなのですが、何も言われなかったそうです。 そこで私は、「不動産屋からあそこのアパートを紹介された。現在入居者が居るようだが、退去後に引越しを検討している。だが、余りに家賃が安いので、何かあったのではないかと不安である。」と、聞いて回る事にしたのです。 すると、アパートの前の家の方が、あっさりと教えてくれました。 そのアパートの前の入居者・・・ 入水自殺を遂げていたのだそうです・・・・ 話を聞いた直後にアパートへ帰る訳にも行きません。 そこで私は、そのアパートの前の家の前の自動販売機で缶コーヒーを買い、飲みながら歩いて時間を潰す事にしました。 友人に、この事実を伝えるかどうかも悩んでいましたので・・・ この直後に起こった事は、今でも忘れる事が出来ません・・・ 缶コーヒーのプルタブを開けて、ふと友人のアパートを見ると、友人の部屋の窓に、白い服を着た女性が立っているのが映っていました。 部屋の中の方を向いていて、窓の方には背中を向けているので顔などは解りません。 『彼女は黒いTシャツを着ていたはずですが、もしかしたら白い服に着替えたのかも・・・・』 そう思いたかったのですが、明らかに彼女とは違います。 私は、大急ぎでアパートへ帰りました。 玄関のドアノブが濡れていました・・・ 私は、彼女の身に危険が及んでいると思い、玄関から転げる様に彼女の部屋に入ったのですが・・・ 中には、彼女だけしか居ませんでした。 彼女は必死の形相の私を見て、「どうしたの?」と目を丸くするばかりでした。 その後、私は彼女に全てを話し、お金を貸してあげて早急に引越しをさせる事にしました。 引越し先が決まるまで彼女を私のアパートに泊め、引越しは全て業者に任せましたので、あのアパートには二度と近づいておりません。
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