第五話

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視察まであと数日。 「よぉーっし! もう一回だ!」 「おぉーーーっ!!!」 すごい声……。晋作、頑張ってるな~。 最近は稽古にも熱が入っているのか、道場からは大きな声が響いてくる。 それを聞くと、私自身も頑張ろうと思えた。 蒸し暑い中、みんな頑張っているのだから、私だって音を上げるわけにはいかない。 お茶とか用意しようかな。ん? なんだろあれ。人が倒れてる……? 廊下を歩いていると、誰かがうつ伏せで倒れているのが目に入った。 「えっ!? 香奈さん……? 大丈夫ですか!?」 返事はない。 上を向かせておでこを触ると熱くて、顔も赤くなっている。 「玄瑞のとこ連れて行かなきゃ! うっ……人って重いんだ」 どうしよう。私の力じゃ運べない……。 道場からは未だに大きな声が聞こえてくる。 みんな稽古中だから、叫んでも聞こえないだろう。 かといって、香奈さんをここに置いていくわけにもいかない。 「誰かいないの? やっぱり香奈さんを置いて呼びにいくしか……」 「どうかしましたか?」 あっ、男の人の声だ! 良かったぁ……! パッと顔を上げると、そこには宮城さんがいた。
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