第三話

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「そ、そんなことってあるの?」 声が震える。 本当ならもう、私はどこかに嫁いでいても不思議な歳ではない。 だけど色々あって嫁いでないし、当然ながら男の人との経験もない。 だから、自分がそんな対象で見られているとは思ってもいなかった。 「湊を一人部屋とかにしなくて正解だったな。でも、俺がいない時はどうするか……。明日の晩はちょっと出掛ける用事があるんだよな」 「……それなら僕の部屋に来れば良い。湊さえ良ければだが」 「九一の部屋に?」 九一の言葉は嬉しいけど、素直に喜べない。 香奈さんが九一を好きだと言っていたから、同じ部屋で二人で過ごすのはなんだか悪い。 「私は大丈夫だよ。きっと、すぐにそんなのなくなるって!」 だからと言って、栄太郎と同じ部屋は嫌だ。 栄太郎自身も嫌だろうし、私も居心地が悪い。 「なんかあったら叫べばいいし! 近くに栄太郎と九一の部屋あるんだからさ!」 怖くないと言えば嘘になるけど、迷惑はかけたくないし、いつでもみんながいるとは限らない。
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