第三話

19/34
前へ
/121ページ
次へ
「誰だ!?」 「誰だって言い方ないんじゃない? 君ら、サボって何やってんの?」 「よ、吉田さん?」 「気安く名前、呼ばないでくれる?」 薄暗い室内に、四人の男。 そして畳の上に湊が倒れている。 着物が少しだけ乱れ、時折嗚咽も聞こえてくる。 「栄太郎……?」 小さな声で俺の名前を呼ぶ湊に、いつもの強気な様子は全くない。 刀を抜いて目の前の男に突きつける。 誰も刀は持っていなかった。多分、湊を攫うだけだから必要ないとでも思ったんだろう。 「目障りなんだよね。今出て行けば無傷で済むけど。どうする?」 「ひっ……! い、居なくなりますから!」 三人逃げて残り一人。 「君は逃げないの?」 恐怖に顔を歪めて男が後ずさる。 だけど急にニヤリと笑うと背を向け、湊を捕まえた。 「きゃっ!!」 「女がどうなってもいいのか?」 グッと首を締められ、湊は苦しそうに口をパクパクとさせる。 「刀を下に置け」 見せしめるように、また腕に力を込めるとゴホッと咳をする。 仕方なく刀を置こうとしたその時だった。 「え……たろ。だ、め。……う…し……ろっ」
/121ページ

最初のコメントを投稿しよう!

102人が本棚に入れています
本棚に追加