102人が本棚に入れています
本棚に追加
自然と身体が動いていた。
泣いている湊を何故だか放っておけない。
「別に。昨日晋作に頼まれたからだよ」
「そう、だよね」
「ああ、もう。変わったと思ったけど、やっぱり泣き虫のままなんだね。……めんどくさい」
泣くまいと必死に涙を堪えようとしているけど、湊の大きな瞳からは涙がとめどなく零れ落ちてくる。
それが、地面にシミを作っていった。
「わ、たし、泣かないように頑張ったっ。でも、やっぱり怖くって……。松陰先生が、亡くなった日。私、もう泣かないって決めたの……!」
そう言いながらゴシゴシと目を擦る姿は、4年前と変わらない。
「泣、いたら、みんなに……迷惑かけ、ちゃう。それに、松陰先生がいつも笑顔でって、言ってくれたから」
「……ごめん。少し言い過ぎた」
湊は湊で松陰先生が亡くなったことを悲しんでいる。
文を除いては塾生の女は湊一人だけだったから、松陰先生も特に可愛がっていた。
そんなところが、俺の癇に障ったりしたんだけれども。
最初のコメントを投稿しよう!