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宮城さんは香奈さんを見ると、軽々と抱き上げてしまう。
細い腕だというのにどこにそんな力があるのか、なんて疑問が浮かんだけど今は香奈さんを運ぶことの方が先だ。
「あの、玄瑞のところまでおねがいしてもいいですか?」
「はい。もちろん」
笑顔で快諾してくれたことに安心しながら、玄瑞のいるところへと向かう。
「玄瑞っ! いる!?」
襖を壊れんばかりの勢いで開けて中に入ると、少し驚いた表情の玄瑞がいる。
「湊……と宮城君ですか」
「香奈さんが倒れたの!!」
「まずはここに寝かせてください。……顔が赤いですね。湊、水を汲んできてくれますか?」
そう言われ、桶を片手に部屋を飛び出す。
井戸へ行って水を汲み、急ぎ足で、でも零さないように慎重にまた部屋へと戻る。
冷たい井戸水に手拭いを浸しておでこに乗せると、少しだけ苦しそうな表情が和らいだ気がする。
「疲れが溜まっている上、暑さにやられたのでしょうね。病気とかではなさそうなので大丈夫ですよ」
玄瑞のその言葉に胸が痛くなった。
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