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-プロローグ-
気が付いたら、家が燃えていた。全焼だ。
警察の話では、どうやら父さんの寝煙草が原因だったらしい。
俺は燃え盛る炎の中、妹と共に命辛がら外へ逃げ出した。だが、両親はまともに火に呑まれ、消防活動が終了してまもなく、見るも無惨な姿で発見された。
妹の梔 文節(くちなし ふみよ)は、当時のショックが強く失語症となってしまい、3日後に電車のホームから飛び降りて自殺をした。それもやはり、とても無惨な姿となって回収された。
こうして俺、梔 鷹文(くちなし たかふみ)は、たった一つの事件で家も、金も、家族も。全てを失った。
そんな絶望的な状況の俺に、目の前の、薄ピンクのベッドに腰掛けた少女は言う。
「良かったじゃないか。家も、金も家族も全て失って」
俺は目を見開き、我が耳を疑った。まさか、だって、普通ならそんな言葉を言うはずがない。
だが、彼女はその長い髪を、体とは不釣り合いなほど袖の長いトレーナーに幾本か垂らしながら、尚も言葉を続ける。
「だって、そのおかげで君はこんなにも可愛い女の子と出会えたのだから」
そう言うと、彼女は少し悪戯っぽく微笑んだ。
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