第1話

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サヤカが私たちをぐるって見渡す。 「あぁ~ボク。」 龍二が、すかさずポケットから携帯電話を取り出した。 「はい、もしもし」 話しながら、龍二の顔から表情が消えていく。 まるで、数学の問題を解くような、淡々とした口調。 「わかりました。すぐ行きます。」 「龍二、どうしたの?」 龍二が電話を切るやいなや、私は龍二のほうに身を乗り出す。 龍二がこんな話し方をしたあとは、必ず言う台詞がある。 「ごめん。行かなくちゃ…」 ほら、やっぱりだ! 「あと、ひとりのコレとか?」 竜也くんが笑いながら、小指を立てる。 ほかに女がいるんだろ? 「そんなんじゃないょ。」 龍二は、竜也くんの意図するところがわかるように、私を気遣う目で見ながら、優しく笑ってみせた。 龍二には、こんなふうにときどき謎の電話がかかる。 電話越しに聞こえる声から、女性だということは、イヤがおうでもわかる。 **☆**★**
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