紅終章 それぞれの思い

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時、同じくして 太平洋沿岸。   豊後国から遠く離れた 駿河国へ向かう一隻の帆船に 大友ソウリンが自軍の兵士と 共に乗っていた。   (……北条さん、大丈夫かしら? あの色欲女に、たぶらかされて 無いと良いんだけど……)   操舵室の隅で『弩・佛狼機砲』を 手入れしながら、北条の身を 案ずるソウリン。   「今日の航海は、静かですねぇ。 ソウリン様……」   側近の兵士が、ソウリンに 話しかける。   「平穏な静けさか……。それとも 嵐が来る前の静けさか……。 順調過ぎて、逆に怖いわね」   「怖い事、言わないで下さいよ。 ソウリン様……。それよりも メシア様に、また会えますね」   「……そうね。また何処か 怪我でもしてなきゃ、良いけど」   「東国では、奇妙な者達が あちこちの乙女達を襲撃している と言う話しですからね……。 気を引き締めないと」   「……分かってるわ。 北条さんは、九州統治に 尽力してくれたんだもの。 私も、彼の恩に応えなくては 神に祈る資格は、ありません」   『弩・佛狼機砲』の整備を終えた ソウリンは、窓から月を眺め 北条との再会を待ち望んでいた。
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