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私は小学校に入学してすぐに病気になり、その病気を治すために入院することになった。
初めのうちはお母さんとお父さんに会えないことが辛くてずっと泣いていた。しかし、私が泣いていると同じ部屋の人たちが心配して優しくしてくれる。隣のベッドのおばちゃんやお姉ちゃんが、私が落ち着くまで一緒にいてくれた。
部屋の中には4つのベッドがあり、その全てが使われていた。廊下側の2つにはおばさんとお姉ちゃんが、窓側には私と「先生」と呼ばれているお婆さんがいた。
ベッドはそれぞれがピンク色のカーテンで仕切ることができ、暇なとき私はカーテンを動かして遊んでいた。そうすると決まって隣のおばさんに「そんなことしてたら壊れちゃうよ。用事があるとき以外は使っちゃダメだよ」と言われる。
そうすると私は、「じゃあ先生のところに行こーっと」と言って向かいのベッドの周りにあるカーテンを開けて、「先生、あそぼー」と言って、先生が寝ているベッドに座るのだった。
先生がなぜ「先生」と呼ばれているのかというと、昔は学校の先生だったからだそうだ。
「私は先生と呼ばれるのが苦手なのだ」前に一度、先生がそんなことを言っていた。
「どうして?」
「先生と呼ばれると、私は自分のことを徳の高い人間だと思い込んでしまう。自分に自惚れてしまうのだ」
「でも先生は偉いよ?だって私の知らないことを教えてくれるもん」
「私が教えてあげられることは今まで生きてきて知ってきたことだけだ。それをただ伝えているだけなのだよ。君もいつか伝える側になるのだよ」
「私も先生になれるの?」
「なるさ。必ずね」そう言って先生は私の頭を撫でた。「だから勉強をしっかりとしないとね」
「まだ勉強は早いよー」私がそう言うと、先生は静かに「勉強をすることに早いも遅いもないのだよ」と言った。
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