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「スノウ、お前さ。付き合えよ」
「え?」
「ここ、舞って書いてるだろ? ここ読んで」
付き合えよ、の言葉に一瞬ドキリとしたスノウは、言われた瞬間、冗談ではなく心臓がぴょんと飛び跳ねた気がした。しかし続いた言葉にその勘違いをすぐに打消し、間違ったことを想像した自分を心中で叱咤しながら、差し出された台本を覗き込んだ。
「舞は……恋人?」
「違う。妹だ」
「いもうと……」
なんとなくショックで、一文字ずつを区切って呟くように言うと、蓮はひょいと眉を上げてから、あぁ、と言った。
「何。彼女役でもやれると思ったか?」
自分でも意地悪だなと思いながら蓮が尋ねると、スノウはプイと横を向いて、知らないっ、と小声で呟く。
年相応らしい、可愛らしい態度にやっぱりおかしくなってケタケタ蓮が笑うと、酷いと言いながらスノウは蓮から座る位置をずらして距離を置いた。そういう態度を見せられることも蓮は初めてだった。大抵の女は打ち解けると、どんどん距離を縮めてくる。
真反対の行動に目を見張りながら、その行動の新鮮さと初々しい態度に、自分からは間違っても手を伸ばすまい、と無意味な誓いを立てた。
(まぁ、手を出すとかあり得ない、か)
6つも下の童顔な少女を見ながらそんなことを思いつつ、蓮は唐突にセリフを読み上げた。
『さぁ舞どうする? 今なら俺が連れて行ってやるぞ?』
突然口調の変わった蓮にパッとスノウが振り返ると、蓮はニヤリと口角を上げた。ずいと台本を差し出すと、とんとんと無言でセリフを指差した。
「え、よ、読むんですか!?」
「ここだ、ここ」
「え、えーえー!? えと。えと……『そ、それじゃお兄ちゃん。お願いしてもいい?』」
「ぷっ、固すぎ」
「だって、こんなのしたことないもん」
「いいだろ、初体験ってことで」
「なっ!? は、初体験って!!」
そんな会話を続けてまた二人で顔を見合わせて笑う。そのタイミングがあまりにも同じで、二人とも笑いが止まらなくなる。
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