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あれから3年の月日が過ぎた。
その間に椎名蓮は変わり、再び多忙を極める素晴らしいアクターへと変貌していた。
彼の演技は『一つ一つが丁寧で繊細』との高い評価を得て、昨年は助演男優賞を受賞。今年は『彼が主演を張る、最高の作品が生まれるのでは』とまで囁かれている。
その一方で、蓮の心は依然埋まらない穴を感じていた。彼の取り戻したいもの……それを取り戻すかのように仕事に勤しんでいる。けれど、手に入るのは称賛の声ばかりで、彼の心には何一つ響かなかった。
ただ自分の存在が世間に広まることで、もしかしたらどこかで『スノウが見ているかもしれない』という期待だけは抱いていた。
「はぁ……」
思わずため息を零してしまうほどの多忙ぶりに、ソファーに腰かけてからずるずると倒れ込んだ。何となく空けてしまう人ひとり分のスペース。その空間を見ながらフッと頬が緩む。
馬鹿だと自分でも蓮は思っていた。想ったところで、会える保証なんてどこにもない。それどころか一生会えない可能性の方が高かった。
『もう二度と現れませんから』
その言葉を後になって思い出したからだ。
それでももし運命なんてモノが存在していたら、自分にもう一度あの日が取り戻せる時が来るのではないかと、儚い期待をしていた。
けれどその期待も3年を過ぎ、脆く崩れそうになっていた。
また世間と自分のずれを蓮は感じている。
自分の芝は、やはりそこまで青くはない――と。
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