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そうだとしたら、自分の人生は一体なんだったのだろうと後悔しか残らない。居ても立っても居られずに考え付いたのが、今までずっと願って叶わなかった「椎名蓮」に逢うことだった。
けれど、小春にはどうしてよいか分からない。それこそ自分で動くには身体が弱すぎる。そこでインターネットを頼りに、ひたすら椎名蓮を調べに調べた。
これ以上ない程細かに椎名蓮の情報を探り出し、割り出した情報の一つは水曜日に仕事がないのではないかということ。出演番組の収録日や、舞台稽古など蓮以外の人が発信している情報を頼りに素人の小春の力で何とかその事実を割り出せた。
後はどうやって出会うかだ。住んでいるところに押しかける、安直だと思ったがそれしか思いつかずに住処を探すものの、なかなか家を割り出せない。大よその地域は分かるが、住む家まで断定するとなると難しい。偶然にも都内近郊ということで、自分の足でもなんとか行けそうな範囲だということは分かった。けれどそこから話が進まない。
近づく手術日。どうせなら、偶然にも今年は水曜日である自分の誕生日に会いたい。
全財産を叩いてでも、椎名蓮に会いたい。
その気持ちが通じたのか、芸能人目撃情報というサイトで椎名蓮の名前を見つけた。目撃日時は直近で、M町の国道沿いにあるコンビニ付近を早朝に歩いていた、というものだった。その情報を頼りに地図検索を始めると、恐らく高層マンションの上階に住んでいるらしいと情報を得ていた物件と合致するマンションが一つ見つかった。
実際にここに住んでいるかは分からない。何もかもが推測で正しいといえることなど一つもない。それでも朝一から張り込んで、椎名蓮に会えるか賭けてみたいと小春は思った。
そして当日、まだ春先の薄暗くて寒い4月10日の午前5時から待つこと1時間。現れた蓮に顔が笑うのを止められないまま、小春は彼の腕を引いた。
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