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「ご飯!」
一つの大きな扉を開けると、血の臭いと、腐臭と、あとは何とも言えない臭いが混ざりあったものが鼻腔をくすぐる。
人間にとっては吐き気を催すような臭いだろう。しかし、黒竜率いる魔族にとってはなによりのご馳走の匂いだ。
「エルファルート様、どうぞこちらに」
顔がライオンの男や、カエルの姿をした女、顔が三つある奇妙なやつなど、誰一人として同じ姿をせずに、ずらりとテーブルについていた。
皆一様にエルファルートを真っ直ぐに見つめ、彼女の着席を今か今かと待っている。
「今日のご飯は何かな? えっと……」
エルファルートは他の人の名前が分からない。いや、覚えようとしないと言った方が適切だろう。その点ではカルファは特別だったのだ。
「鬼族のガウルがなぜか死んでいたので、メインディッシュにしました」
「鬼族……あ、死んじゃったのか。つまらないな」
質問に答えたカエル女は、不思議そうにエルファルートを眺めた。
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