プロローグ

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一息に話をすると、娘が不服そうに頬を膨らませて言いました。 「勇者様は負けちゃったの? そしたら世界を守れないじゃない! 黒竜はどうなるの? 倒されないの?」 「ふふ、こんなのただの作り話よ。もう寝なさい、明日は学校でしょ?」 そう。これは作り話。作り話には間違いない。 「本当は……もうほとんど闇に染まっているのよ」 「お母さん? 何か言った?」 「あ、ううん。なんでもないわ」 子どもたちには今の現状を知られてはならない。 もうこの世界に人間の住む場所などないこと、神様にすら見放されていることを。 私は暗闇に染まった窓の外を眺めながら、胸の前で手を組んだ。 「どうか、今回の勇者様が世界を変えてくださいますように」
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