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純也が美穂子さんを抱きかかえ、あたしは毛布を拝借し、遠藤さんを始めとする榊組の面々に黙礼をして病室を後にした。
表に出ると、チャンパーがGTRの助手席を開けて待っていた。
純也がそっと優しく助手席に寝かせ、あたしが毛布を被せた。
そして一度静かに閉じてから、残った隙間を埋めるようにしてドアを押し込んだ。
倒れたままのスクーターに向かうと、純也が先回ってそれを起こした。
そして、あたしが手にしていたキーでスクーターを始動さると、大きな体を縮こまらせてシートの前半分に座った。
あたしは黙ってその後ろ半分に座り、純也につかまった。
何だか少し嬉しい。
政やんに教わって、自転車の補助輪が取れたばかりの純也が、こうしてあたしを乗せてくれたあの頃を思い出す。
GTRを従えて少しだけ走るとスクーターが止まった。
「後ろからついてく。気をつけろよ」
純也の言葉と同時にあたしの浸っていた甘い思い出も停止した。
もう!
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