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その日の放課後。
いつものように下校放送を終えてブースから出ると、机の上の携帯が振動している事に気付いた。
見ると、届いたのは板東先輩からのメールだった。
『びっくりさせたいことがあるので、体育館まで来てください。誰にも内緒だよ』
「……?」
……なにこれ……。
わたしは首を傾げた。
変なメール。
先輩らしくない文章。それに……。
さっき昇降口で待ち合わせしようと決めたばかりなのに、それを変更することに関しての説明もないなんて。
違和感が不信感へと変わり、さらに胸騒ぎへと変容していく。
『あなたは本当に板東先輩ですか』
短い文章を打って、送信ボタンを押す。
携帯を操作する指先が滑り、手にじっとりと汗がにじんでいる事に気付いた。
しばらく待つと、すぐに返事が返ってくる。
開いたわたしは、息を呑んだ。
『俺のことが信じられないの?来ないと別れるよ?』
――やっぱり――。
板東先輩じゃない。
背筋がゾクゾクと粟立ち、耳元で何かの警報が鳴り響く。
『――椎名さん。……あなた、その顔、違うわよね?
……されていないわよね?そんなこと……』
脳裏にフジコ先生の心配そうな表情が浮かぶ。
――まさか……。
万優架が弄ばれている画が目の前にちらつき、わたしは唇を噛んだ。
――これは、罠だ。
よくわからないけど、――これはただのいたずらじゃない。
悪意ある、恐ろしい罠だ。
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