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今度はメールではなく、着信だ。
”板東悠斗”という表示を見つめ、少し迷ってから思い切って電話に出る。
「はい」
ガサゴソ、という耳障りな音。
『あ、萌?オレオレ。板東だけどー』
明らかにふざけた声の背後で、大きな笑いが湧いた。
「どなたですか」
動揺を押し殺し、できるだけ冷静な声で応える。
『なんだよ、ノリ悪いなあ。
そういう可愛くない態度取ると、板東の足、ポッキリ行っちゃうよ?
――音、聴く?』
サッカー部のレギュラーが骨折したという話が瞬時に頭に浮かび、息が止まりそうになる。
「――やめてっ!!」
悲鳴のような声で叫ぶと、『やめてえーっ』と真似る声に続き、また笑いが起こった。
電話の向こうには、かなりの人数がいるようだ。
『じゃあ、――来てよ体育館』
突然、声が低くなった。
『言っとくけど、誰かにチクッたりしたらマジで両足ポッキリだかんね。
それに――』
くくく、と嫌な笑い声が響く。
『俺たちが捕まったら板東も終わるから。――こいつもすでに同罪なんで。
――じゃ、そーゆーわけで。待ってるよん、萌、ちゃんっ」
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