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歩く振動で、わたしの両目から、ぽと、ぽと、と涙が落ちた。
――先輩を、好きになる……?
そんなこと、出来るはずがなかった。
はじめからわかっていたことだ。
わたしには、春山先生を諦めることなんて、絶対に出来はしない。
『俺、萌ちゃんに本気で好きになって貰えるように、頑張るからさ。
すぐには無理でも、少しずつ好きになって貰えるように……』
板東先輩の笑顔が暗がりに浮かんで、消えた。
――ごめんなさい……。
本当に、ごめんなさい。
わたしはきっと、あなたを好きになることは出来ません。
でも、……ちゃんと上手に、あなたのカノジョになってみせるから。
好きになってあげられないなら、せめて……。
わたしは、零れ落ちる涙を手のひらで拭った。
せめて、――先輩はわたしが助ける。
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