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「わたし、別れるなんて、言いません」 「……?」 「まだ、ちゃんとしてませんでしたよね。お返事」  わたしは少し不安げに曇る先輩の目を見つめ返した。  ――初めて、正面からまっすぐに。 「わたし、先輩のこと大切にしたいって思ってます。 先輩がわたしのことを想ってくれるなら、わたしもその想いに応えたいって」 「……」 「今は、そういう気持でも、――いいですか……?」  先輩は、しばらく黙ってわたしを見つめていた。  やがて優しく手を握り返し、ほっと息を吐く。 「よかった」 「……え……」 「絶対、振られると思ってたから」  先輩の顔に、何かから解放されたような柔らかな表情が降りた。 「めちゃめちゃ嬉しい。そんな風に思ってくれて」  本当に嬉しそうに、ふわりと笑みを浮かべる。 「俺さ、実はわかってたんだよね。萌ちゃんは俺の告白を断れなかっただけだってこと。 わかってたけど、――その萌ちゃんの優しさに甘えて、気付かないふりしてた。 側にいられるならそれだけでいいって、自分の身勝手、貫いて……。 まさに、藁にもすがる思い、ってヤツ。サイテーだよね」  わたしは言葉に詰まった。  先輩は、悪くない。――悪いのは、わたしなのに……。 「俺、萌ちゃんに本気で好きになって貰えるように、頑張るからさ。 すぐには無理でも、……少しずつ、好きになって貰えるように……」 「……」  先輩が、こんな風に思ってくれているんだから……。  それに応えられるよう、頑張らなきゃ。
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