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「これからも、よろしくお願いします」
笑顔でそう言うと、先輩は心から嬉しそうに笑った。
わたしの手をしっかりと握り直し、――ふと、真剣な顔になる。
「……萌ちゃんのことは、俺が絶対に、守るから」
「……?」
聞き違いかと思って、先輩の顔を見る。
――今、なんて……。
”守る”、って言った…?
口を開こうとしたその時、突然放送部のドアが開いた。
田辺くんが顔を出し、「おっ」と目を丸くする。
握られたわたし達の手に視線を落とし、一瞬間があって――。
バタン。
唐突にドアが閉まった。
「……」
「……」
先輩が吹き出し、わたしも笑った。
ふたりで一緒に大笑いしたのは、これが初めてかもしれない。
「――今日さ」
ひとしきり笑ってから、先輩が言った。
「榊がいないから、自主トレだけで解散するつもりなんだ。
久しぶりに一緒に帰ろう」
「……はいっ」
先輩が周りを見回し、素早くわたしの唇にキスを落とす。
幸せそうな笑顔を見て、自然と頬が緩んだ。
――大丈夫。
この人のこと、きっと好きになれる。
いつか、――気持ちのいいキスも、交わせるようになる。
なぜか不意に、保健室で触れた先生の唇の感触が蘇り、――胸がきゅうっと締め付けられ、泣きそうになった。
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