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石を五つ積むことに成功し、わたしはヨシッ、と小さく呟いた。
六段目に挑戦しようと周りを見回し、出来るだけ平らな石を探し始める。
学校の駐車場には、まだ何台か車が残っている。
17と番号が振られた駐車スペースで、わたしは輪止めに腰かけ、石の積み上げ記録に挑戦し、時間を潰していた。
長時間ここにいる間に体が冷えて、さっきから鼻をすすっている。
六つめの石に挑戦していたところに、車のエンジン音が近づいて来た。
顔を上げると、ヘッドライトの光を正面からまともに受け、わたしはその眩しさに顔をしかめ、右手を目の辺りにかざした。
エンジン音の向こうで、パワーウインドが開く音がする。
「椎名。――何やってんの、こんなとこで」
春山先生の驚いたような声。
「待ってたんです。先生のこと」
先生の表情は、ヘッドライトの光で全く見えない。
しばらく間があってから、カチ、とライトが消された。
「とりあえず、そこどいて。車、停めるから」
「はい」
わたしは立ち上がって、スカートの砂をポンポン、と払った。
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