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*****  黒のセダンは、滑るように夜の道を走っていた。  両側に立つ街灯が後方に流れ、光の筋を描いていく。   「……何?」  沈黙の後、先生が突然口を開いた。 「何か用があって待ってたんじゃないの」 「……」  自分でも、わからない。 「先生に……」  でも、――これだけは、確か。 「……先生に、会いたかったの」  ぼそっと呟いたわたしの言葉は、確かに先生に聞こえたはずだった。  道路が少し混み始め、先の信号に長い列が出来ているのが見える。  先生はウインカーを出して、信号の手前を左に入った。  しばらく走って、今度は信号のない交差点を右に入る。 「なんで、体育館に行ったの」  車が曲がるたびに、わたしのカバンについたキーホルダーが大きく揺れる。 「わかってただろ。危ない目に遭うって」 「……」 「――板東のため?」  細いバス通りは空いていた。  しばらく直進し、赤信号で車が停車する。
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