1353人が本棚に入れています
本棚に追加
パトカーの回転灯が、体育館の壁にちかちかと赤い光を反射している。
わたしは校舎の階段の踊り場にある窓から、じっとその赤い灯を見ていた。
学校の大きなワゴンに、ぞろぞろと人影が乗り込んで行く。
ここからは、その中に先輩がいるのかどうか、確認することが出来なかった。
「――椎名。大丈夫か?」
見下ろすと、榊先生が階段を上って来るところだった。
「榊先生……。ついていかないんですか」
「もちろん行くよ。
サッカー部の電話リスト、取りに来たんだ。……親御さんにも、警察に来てもらわないとな」
疲れ切った顔で、ため息をつく。
「先生こそ、大丈夫ですか」
「……大丈夫では、ないよ。……全ては俺の監督不行き届きだからな」
先生は、ひきつった笑顔を見せた。
「お前らの担任、続けることは出来なくなるかもしれない。……あと少しだったのに、な」
「……」
「椎名。放送部、がんばれよ。それと坂口の事、よろしく頼むな」
榊先生はわたしの肩をポン、と叩いて、職員室のある2階に上がって行く。
――あれ……。
なんか、今……。
ハッとして階段の上を見上げたけれど――榊先生の姿はすでに視界から消えていた。
*****
はやる気持ちを抑え、1階に下りて廊下を見回す。
きょろきょろしていると、少し先に消火器のケースが目に留まった。
足早に歩み寄り、傍にしゃがみ込む。
――あった。
そこに書かれた文字を読み、呟く。
「……そうだったんだ……」
自分の勘違いに気付いた衝撃で、わたしはしばらくそのまま、消火器の前に座り込んでいた。
最初のコメントを投稿しよう!