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***** 「雪村くんが、全部話してくれたのよ」 「やっぱり……」  わたしはミルク入りのコーヒーで両手を温めながら、頷いた。 「やっぱり、って?」 「雪村くん、口軽そうだから」 「あら、そんなことなかったわよ。聴き出すの、すごーく大変だったんだから」  カウンセリング室に着いた時、部屋の中はすでにコーヒーの香りで満たされていた。  フジコ先生はこんな時に大がかりな書類整理をしていた。  頭の中を整理する必要があるときは、いつもこれを始めるらしい。 「……大変、て?」 「榊くんが必死で聞き出そうとしても、まったく話が進まなくてね。 そりゃ、雪村くんとしたってさすがにこんな大事件だもの、簡単に話すわけにはいかないじゃない? ――ところがね」  フジコ先生はなぜか声をひそめた。 「途中で春山くんにバトンタッチしたら――絶妙にカマかけまくって、あっという間に全部、聞き出しちゃったのよ。最後には体育倉庫っていう場所まで。 ……春山くんて……時々、おそろしいわ」  ――わたしもそう思います……。  フジコ先生は、選り分けた書類を足元の段ボールにドサッと入れた。 「サッカー賭博の件、聞いた?」 「あ……はい、あの都筑って人から」 「じゃ、生け贄、っていう話も?」 「……はい」  わたしはマグカップに目線を落とした。 「みんな、どうして抜けるって言えなかったんだろう。もう、やめようって。 ……だってみんな、力で押さえつけられていたってわけじゃないんですよ? 誰かに怯えてるってわけでもなくて、すごく仲良しだし……。 いったい、何があの人たちを縛り付けていたのか…」 「友情よ」 「――友情――?」  わたしは先生の言葉の意味が分からず、首をかしげた。
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