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「もちろん、それは彼なりに心配してたのよ。
坂口さんが自分の代わりにまた何かされるかもしれない……。
それで、彼女にもしばらく学校を休むように、指示したのよ」
「まるで子供…」
わたしは腹立ち半分、呆れ半分で言った。
「子供よ、みんな」
フジコ先生にちらりと横目で見られ、むっと口を尖らせる。
「どうせ子供ですけどね、わたしも」
「そうよ、本当に。もっと人を疑わなきゃ」
フジコ先生は微笑んだ。
「前に、坂口さんの家の傍で会ったわよね。あの時、どうして板東くんがついて来たと思う?」
わたしは少し考えてから、あっと声を上げた。
「万優架への……プレッシャー、ですか」
「たぶん、ね」
先生は頷いた。
「あなたたちと別れた後、坂口さんの家に行ったら……彼女、すごく怯えていたわ。
板東くんが帰ったかどうか、しきりに気にして……。
その時、あなたと板東くんがつき合ってるってわたしが話したから、……だから彼女はあなたと全く会おうとしなかったのよ」
「……」
先輩は、わたしと一緒に万優架の家に現れることで、万優架がわたしに何かを漏らす事を封じようとしたのだ。
そんなこと、あの時は考えもしなかった。
さっきも、雪村くんを迎えに行くという春山先生に、板東先輩はついていくと言って聞かなかった。
もしかしたらそれも、雪村くんが何も話さないよう見張るため……。
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