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「……先生……。
先輩たち、どうなるんでしょうか」
「それは、――ただではすまないでしょうね」
フジコ先生は沈んだ声で言った。
さっき、パトカーがサイレンを鳴らさずに門から出て行くのが見えた。
学校のバンが2台、そして春山先生の車も、後から付いて行った。
あの中に板東先輩も乗っていたと思うと、……胸が重く、苦しくなる。
「榊先生、……泣きそうな顔してました」
わたしは、ぽつりと言った。
「そう。そりゃ、……可愛がっていた部員たちが自分の知らないところであんなことしてたんだもの。平気ではいられないわよ」
「峰村先生、――ちゃんと、慰めてあげました?」
「……」
フジコ先生は、驚いたようにわたしの顔を見て、…やがて、諦めたようにフッと笑った。
「やっぱり、知ってたの……。
完璧に隠してたつもりだったのに、どうしてわかったの?」
「香水」
わたしは、少し得意げに言った。
「さっき、榊先生とすれ違った時、甘い香りが――峰村先生の香水の香りがしたんです。……ここで、抱きしめてあげたんでしょ」
フジコ先生が、少し顔を赤らめる。
――かわいい。
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