寂しさ

5/8
前へ
/18ページ
次へ
玲人さんが用意した車に乗せてもらう。車内は見た目より広く、座席は向かい合うような形になっていた。 「多分30分位かかるから、その間話、しようか」 笑いかけられて、ドキッと思いながらも「はい」と答える。ふと、鏡夜様が昨日‘玲人,と呼び捨てをしていたのを思い出す。 「そういえば、玲人さんはなんのお仕事をしていらっしゃるんですか?」 すると、玲人さんは嬉しそうに答える。 「俺はね~鏡夜の会社と協定を結んでる会社の一応社長なんだけど、主に医療を取り扱ってるんだ」 「医療?」 「うん。いっけん鏡夜の貿易会社と関係ないように見えるけど、海外への医者の派遣とか、薬の輸出とか…そんな感じのことやってんだ」 「すごいですね、お若いのに」 「いやいや、鏡夜と比べたら全然すごかないよ」 玲人さんは本当に謙遜している訳ではなく、本心から鏡夜様を尊敬しているのが分かった。 「ま、鏡夜の家ついたらそのすごさがすぐ分かるよ」 目の前には現代風のお洒落な白い家。表札には『四季鏡夜』と彫られていた。 玲人さんがインターホンを押す。ピンポーンの音の数秒後に『…はい』と鏡夜様の声が聞こえた。 「玲人で~す」 『…今日は何かあったか?』 「ないけど、さゆりちゃん連れてきました~!」 すると、インターホンの向こう側からカチャと切る音が聞こえた。 やっぱり迷惑だったかな… 少しだけショックに思っていると、玄関のドアが開いた。向こう側には昨日のよりも不機嫌そうな表情の鏡夜様がいた。 「…なんで来た」 「さゆりちゃんがお前がいないと寂しいって言ったから☆」 「「!!?」」 驚いて玲人さんを見ると 「斗真から聞いた」と言っていたのを思い出す。 斗真さん、気付いてたんだ…というか、いつの間に。 鏡夜様を見ると私と同じで驚いたらしく、目を見開いていた。そして深いため息をつくと、ドアの隙間を少し大きくした。 「何回か来てるけど、お邪魔しまーす」 「お邪魔します…」 私は玲人さんの後ろについて中に入った。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加