寂しさ

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大理石の床を三人で無言で歩く。二階に上がってから、鏡夜様が玲人さんを振り返った。 「一応客だから、客間に案内するぞ。いいな?」 「あぁ。さゆりちゃんもいいよね?」 「はい」 鏡夜様が開けたドアの部屋には大きな窓があり、海が一望出来る形になっていた。部屋の真ん中には向かいっているソファーが二つとその間にテーブルがあった。 玲人さんがなんの躊躇いもなくソファーに座り、私も慌ててその隣に座った。 「確か俺がいなくて寂しいんだったな」 鏡夜様が玲人さんの向かい側に座りながら言う。 「…それをどう俺に解決しろと?」 「俺的にはさ~」 玲人さんが自慢気に指をたてる。 「さゆりちゃんは鏡夜のこと全然知らないから寂しいと思っちゃうんじゃない?」 「あ…」 確かに言われてみるとそうかもしれない。 けれど、鏡夜様は玲人さんの言葉にさらに気を悪くしたらしく、眉を寄せる。 「俺のことは知らなくていい。だったら寂しく感じる必要もなくなる筈だ」 「っ」 拒絶された、と思って言葉がつまる。確かに婚姻は前任者同士での約束だから私達は関係ないかもしれないけれど… 「お前さ」 玲人さんの声が低くなる。 「いくら親同士の約束だとしても、お前はそれを受け入れたんだ。だからさゆりちゃんと接する義務があるだろ」 二人の睨み合いが数秒続き…鏡夜様が折れた。 「分かった…さゆり」 「は、はいっ!」 突然名前を呼ばれて声が裏返る。 「まず俺を知るには“仕事”だ」
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