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「当家は元は京都の名家だったのですが、前当主が貿易会社を立ち上げた為、東京に移転しました。事業は成功し、今は国内の様々な分野の会社と手を組み、貿易にさらに力をいれています」
斗真さんが軽く四季家の現在を話してくれる。
「白百合家とはその会社を立ち上げる際に援助をしていただきまして、前当主と白百合家の前当主との間で今回の話が持ち上がったとか」
「ええ、その通りです」
菫さんが何故か自慢気にそう言う。私はというと大きな日本庭園を見ながらその話を聞いていた。鏡夜様と初めて会ったのも、家の庭だったかな…そんなことをボーっと考えていると、斗真さんが止まった。
「この部屋です」
斗真さんはそう言うとしゃがみ、襖の中に話しかけた。
「鏡夜様、さゆり様と菫様をお連れいたしました」
「…入れ」
凛とした低い声が響き、胸の鼓動が少しだけ速くなる。
斗真さんが襖を開けてくれて、入る為にしゃがみ、中を見ると…そこにはものすっっごく不機嫌そうなオーラを漂わせている焦げ茶の髪のスーツ姿の男の人が正座していた。
「さゆり様は鏡夜様の前に」
指定された場所はその男の人の前だった。
本当に、あの鏡夜様…?
今、自分の目の前にいるその人は子供の頃のあの優しい面影を全く感じられず、しかめっ面で眉を寄せていた。
けど…と思い目線だけチラッと鏡夜様を見る。
相変わらず、綺麗だな…子供の時よりも当たり前だけど、さらに綺麗で大人になっていた。
「…そういえば、さゆり様は私と同じ17歳なんですよね?」
いつの間にか鏡夜様の隣に座っていた斗真さんに話かけられる。
「はい。今月の頭に」
すると何故か鏡夜様が驚いたように目を見開いた。
「17…」
「?はい、そうですけど…」
不思議に思って問い返すと、突然襖が開いた。
「鏡夜様、クリフォード様がいらっしゃっています」
「玲人か…」
鏡夜様は溜め息をつき、「すまない、急用の為抜ける」と言い残し、部屋から出ていった。
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