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「なんなんですかっ!?本当に姫様が言っていたあの鏡夜様なんですか!?」
「まぁ、人は変わるっていいますし…」
2人で長い廊下を歩きながら、鏡夜様について話し合う。
「無表情、無愛想、無感情!無の三連発じゃないですか!」
菫さんが「うがーっ!」と叫ぶ。(但し小声)
菫さん程じゃないけれど、昔の面影が一切ない鏡夜様に私も少しだけ戸惑っていた。
「あ、ここです」
菫さんが気がついたように綺麗な百合の花が刺繍されている襖の前に立った。
「ここが姫様の部屋みたいです」
菫さんがゆっくり襖を開ける。中は畳でとても広く、白百合の家と構造はそんなに変わらなかった。
「じゃあ、姫様。私は四季様の使用人の方達に挨拶してきますので、また明日」
「はい。ありがとうございました」
菫さんはニコッと笑って、外に出て襖を閉めた。
「はぁっ…」
緊張していたのか自然に溜め息が出る。今日何度目の溜め息だろう。
着ていた着物を脱いで、浴衣に着替える。
室内は和で統一されていて、私の好きな真っ白な百合の花も飾ってあった。
「綺麗…」
偶然だろうけど、少しだけ心が軽くなる。と、思ったけれどあの鏡夜様の鋭い眼光を思い出して気持ちが沈む。
小さい頃に鏡夜様に好きな花が百合だっていうことを話した記憶があるけれど、あの様子じゃ覚えていないかもしれない。
私は、期待していたのかもしれない。
あの、優しい鏡夜様だったらあの頃みたいに私を受け入れてくれるかもしれないと…
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