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チュンチュンと屋敷の庭で鳥が気持ち良さそうに鳴いている朝。
俺はいつも通り、朝の日課をこなしていた。
ここ、メルキュール家には使用人を統括する家令もいるが、旦那様の仕事の補佐等で忙しくて、俺がいるときは基本的に俺が使用人達に指示を出している。
執事である俺の仕事は朝から多く、使用人達のその日の仕事の振り分けに始まり、屋敷の調度品や絵画をその日訪れる客の趣向に合わせたり、細々とした事も含めればやることは数多くある。
そんな朝の一時。忙しい時間の合間を縫ってでもやらねばならない事が俺にはあった。
それはーー、
「お嬢様、起きてください」
我が家のお嬢様を起こす事だ。
これだけは譲れない。なんて言ったって、うちのお嬢様はべらぼぅに美少女だ。
今は閉じているがその切れ長な瞳も、むにむにと動かしている小さな口も、それらと上手く調和の取れている鼻も、顔のパーツの一つ一つがそれぞれ美しく、それらが顔という一つになるとそれはもはや芸術。
そんなお嬢様の寝顔を鑑賞し、そして起こせる。まさに男冥利に尽きるイベントである。
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