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話を簡単にまとめると、ミラは街中で大きめの火柱を作ったのだ。
「そんなことして、大火災になったらどうするつもりだったんだミラ!」
「痛い痛い痛い、ごめんなさい! 大丈夫だよマリアちゃんが障壁を張ったから!」
「自分でやれ!全く……」
ようやくアインが手を離す。つねられて赤くなっている痕を、涙目でさするミラ。
やりすぎたとは思わない。一週間もすればミラは、自分が怒られたことを忘れるだろう。
「もういいや。みんな、行くぞ」
「え? ああ、うん」
アインが立ち上がり、遅れてミラも立ち上がる。ニコラは無言で部屋を出て行く。マリアは、状況が掴めず不安げな顔をした。
「あの……行く、とはどちらへ?」
「全部、山賊が悪い」
「え?」
「アインはね、山賊を殲滅しに行く、って言ってるんだよ」
アインの回答をミラが翻訳する。それでも、マリアは疑問符を解消できない。
「山賊を潰す。ついでに存在をアピール」
「ああ……でも」
「マリアは戦闘要員じゃないし、ついてこなくてもいいぞ」
ニコラが戻ってきた。黒革のマントとブーツを装備している。それは、夜に仕事を行うときのニコラ式のスタイルだ。
そんな本気のニコラに言われ、マリアはどうすべきか迷う。
「……ニコラさんは、どっちが嬉しいですか」
結局、ニコラに問うマリア。ニコラは少し考える素振りを見せる。だが、答えはすぐに出た。
「来てくれた方が、心強い……俺は、マリアがいた方が嬉しいが、やはり危険で」
「行きます」
最後まで聴かず、マリアは言う。その瞳には、強い決意の色。
「ニコラさんがそう言ってくださるなら、私はどこにでもついていきます」
「……ニコラ、あれだけ言われてもなんで気づかないんだろうな……」
「味と恋心に鈍すぎるんだよ」
少し離れた所で、アインとミラが苦笑した。
翌朝。
討伐作戦の実行者は、攻め込んだ根城でのびていた盗賊の捕縛のみ行い、帰還した。
尋問の結果、先駆けて攻め込んだのがアイン率いる魔王討伐チームの4人と分かり、アインの知名度は一時的ながらも元に戻った。
……一時的ながら。
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